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下水道管路の「部分補修」工法
全面更生じゃなくても直せるケースとは?
老朽化が進む下水道管路において、「更生工法」による改築更新は今や定番の対応策です。
しかし、現場によっては「全部を直す必要ある?」「劣化は一部だけだよね」という声も多く聞かれます。
そこで注目されているのが、**「部分補修工法」**です。
本記事では、下水道調査や更生検討のなかで、「全面更生に至らないケースでも適用できる補修工法」として、部分補修を選択するための判断ポイント・工法種類・活用例をご紹介します。
1. そもそも「部分補修」とは?
部分補修とは、劣化や損傷が確認された特定の箇所のみを補修し、
管路の機能回復や延命を図る工法です。
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管路全長を更生しない
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限定的に補修材や機器を使う
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短工期・低コスト・周辺影響が少ない
全面更生が「フルリフォーム」なら、部分補修は「ピンポイント修繕」に近いイメージです。
2. 適用されるのはどんなケース?
✅ こんなケースでは「部分補修」が有効!
ケース | 適用理由 |
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管内調査で一部にのみ損傷がある | 全体では健全性が保たれているため、補修で十分対応可能 |
管路全体の更新には予算が届かない | 優先箇所から段階的に補修できる |
地中埋設物が多く施工制限がある | 無掘削・短時間対応がしやすい |
地域住民への影響を最小限に抑えたい | 車道規制・交通遮断の必要が少ない |
更生までのつなぎ措置として | 応急処置として数年の延命を目的とするケースも多い |
3. 部分補修のメリット・デメリット
✅ メリット
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工期が短い(1〜2日で完了可能)
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コストが大幅に抑えられる(1/3〜1/5)
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現場の交通・生活への影響が少ない
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管路機能の維持が期待できる
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設計・発注が比較的容易
⚠ デメリット
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劣化が広範囲な場合は不適
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補修した部分の周囲が後年劣化する可能性
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対応できる劣化症状に限りがある
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接合部の剥離など長期的な信頼性は限定的
4. どんな流れで選定するの?
🎯 工法選定の判断フロー(例)
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TVカメラ調査で劣化位置と内容を特定
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被覆面積・劣化程度・周辺状況を評価
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全面更生が必要か、部分補修で済むかを判定
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適合する部分補修工法を選定
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施工後、再調査による品質確認(必要に応じて)
※工法選定には、事前に「部分補修工法適用条件リスト」を作っておくと便利です。
5. 実際の活用例
💡 某市のケース
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φ250の陶管路で、TV調査により3箇所にひび割れと漏水あり
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路面下にはガス管があり、全面更生は困難
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スリップインライナー工法を3箇所に実施
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工期:わずか2日、周辺通行規制も最小限で完了
→ 翌年度の全体補修につなぐ「緊急対応+暫定措置」として高評価
まとめ:部分補修は「必要なだけ直す」合理的な選択肢
部分補修工法は、全面更生と比べて控えめな印象を持たれがちですが、
現場に即した合理的な工法として、非常に価値のある選択肢です。
「劣化=全面更生」という固定観念ではなく、本当に必要な処置を見極める目が、維持管理コストの最適化につながります。
建設コンサルやゼネコンの提案力としても、「全面更生と部分補修の両案を示す」ことで、発注者との信頼関係を深めることができるでしょう。