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管内の調査、どこまでやるべき?

調査範囲と精度の考え方

下水道管路の調査は、単なる“現況把握”ではなく、維持管理・補修・改築計画に直結する重要業務です。

とはいえ、調査範囲を広げればコストは膨らみ、狭めすぎれば見落としリスクが高まる。

「じゃあ、どこまでやればいいのか?」

本記事では、調査範囲・精度の設計方法と考え方について、現場での実務に基づいた視点から分かりやすく解説します。


1. 下水道調査の基本的な目的とは?

まず押さえておきたいのは、調査の目的に応じて、必要な範囲と精度は変わるということです。

🎯 調査の主な目的

目的 要求される精度
老朽化の全体把握 粗視点検でOK(スクリーニング)
更生・補修工事の設計 精密な寸法・劣化位置の記録が必要
苦情対応(悪臭・陥没など) 現場判断で必要最小限
定期点検・年度管理 一定の基準に基づき継続実施

目的を明確にせず、すべてを高精度で調査するのは非効率です。


2. 調査範囲をどう決めるか?(横展開)

✅ 「対象管路をどこまで含めるか」の考え方

判断軸は以下のとおり:

  1. 築年数・管材・交通荷重などの劣化要因

  2. 過去の陥没・補修・苦情履歴

  3. 流域の重要性(幹線・副線の別)

  4. 上流~下流の水理的・構造的な連続性

💡 たとえば…

  • 苦情が発生したマンホール周辺 → 上下流含めて2~3マス分は調査

  • 中心市街地の陶管(築40年以上) → 系統単位で全線調査

  • 直近で更生済みの管路 → 調査対象から外す判断も可

▶ 実務ヒント

GISや台帳の属性データから「劣化リスクをスコア化」し、

スクリーニング的に対象を絞る手法も有効です。


3. 調査精度をどう決めるか?(縦展開)

✅ 「どのくらい細かく見るか」の考え方

精度レベル 具体例 使用機材 目的
高(設計用) クラック幅、位置、角度など精密計測 TVカメラ(自走式)+解析ソフト 更生・補修設計
中(点検用) 損傷有無、程度の目視判断 管口カメラ、点検ミラーなど スクリーニング調査
低(記録確認) 通水状況、堆積確認 写真、簡易記録 苦情対応、応急確認

▶ 現場感覚のバランス

  • 長距離を調べるなら粗視点検をベースに

  • 更新計画が見えている区間だけ精密調査

  • 施工履歴が不明な管路は要チェック


4. 過不足ない調査設計をするには?

🎯 “予算と必要情報のバランス”を常に意識

✍ 例:建設コンサルの提案段階

  • 「今回はスクリーニング調査を実施 → 詳細調査は次年度提案」

  • 「管材と築年のマトリクス表で対象選定」

  • 「スコア分析により劣化疑いの高い10%だけを抽出」

こうした段階的・合理的な設計により、調査の目的と成果を一致させることができます。


5. 実務事例:この調査は“どこまでやった”?

📍 A自治体の維持管理計画策定業務

  • 延長50kmの管路を対象

  • 調査は管口カメラ+苦情・補修履歴からスクリーニング

  • 抽出された約5kmをTVカメラで精査

  • 結果:7箇所に補修必要箇所、3箇所に更生対象を発見

  • 調査予算は従来の半分以下に圧縮

→ 全体をやるよりも「どこをどう見て、どう判断するか」のほうが実務的には重要。


まとめ:調査範囲と精度は「目的」で決まる

「どこまでやるか?」という疑問に対する答えは、

“何のために調査するのか”という目的によって変わる、ということに尽きます。

すべての管路を詳細調査するのは現実的ではありません。

限られた予算・時間のなかで、必要な情報を的確に・効率的に取得する調査設計が、今後ますます求められます。

調査の“さじ加減”は、まさに技術者の判断力と提案力の見せ所。

その判断が、よりよい維持管理とコスト最適化を実現する鍵となるのです。