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TV調査で見落としやすい5つのポイント
経験者が語る“落とし穴”とは?
下水道の管路調査で主流となっている TVカメラ調査。
映像による視認性と記録性の高さから、今や多くの自治体・コンサルで標準的に使われています。
しかし――
「映像だけで“問題なし”と判断していたが、後に漏水が…」
「報告書上は健全だったのに、陥没事故が発生した…」
こうした**“見落とし”や“読み違い”は、実は現場でよく起きている**のです。
本記事では、TV調査における見落としやすいポイントとその対策を、実務者視点で5つ厳選して解説します。
1. 【死角】カメラが映せない“管口周辺”の見落とし
TVカメラは直進撮影が得意ですが、マンホールとの接合部(管口)付近の状況は映りにくい傾向があります。
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壁面クラック、白華、根入り
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打継ぎ部の漏水・剥離
特に、上流・下流からのカメラ接近が難しい場合、この部位が“死角”となりやすく、劣化の初期兆候を見逃しがちです。
✅ 対策
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管口部はマンホール内からの目視確認をセットにする
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逆方向からも撮影できる場合は両側調査を検討
2. 【照明】管内の暗部に潜む“微細クラック”
TV調査では、照明の強度・方向によって視認性に大きな差が出ます。
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暗部にある微細なひび割れ
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湿潤状態で光が反射して判別不能
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水中に反射するクラック
これらは映像上「何もないように見える」ため、経験の浅い判読者は見逃しがちです。
✅ 対策
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調査時は適正な光量・角度調整を徹底
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映像判読時は再生速度を落として重点確認
3. 【堆積】底泥・水位に隠れた“重大劣化”
TV調査時、堆積物や通水状態によって管底が完全に見えないことがあります。
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堆積でクラックや欠損が覆われている
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サイホン状態で底面が撮影できない
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側壁が水に浸かっていて判断不能
このまま「健全」と判断してしまうと、隠れた破損を見落としてしまうリスクが非常に高くなります。
✅ 対策
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調査前の事前清掃(必要に応じて)
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管底が不明瞭な映像には**「不判定」扱いで再確認を明記**
4. 【映像判読】“人による主観のズレ”が発生しやすい
TV調査の映像は、最終的に人の目によって判読・評価されます。
このとき、評価者の技量や経験によって判断に差が出ることがあります。
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微細クラックか汚れか判断がつかない
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録画映像のブレで異常が見えない
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クラックの“深さ”は画像では測れない
✅ 対策
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複数名での評価・相互確認体制
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客観判定が可能なAI解析・スコアリングの併用も有効
5. 【補修後】補修材に隠された“周辺劣化”の見落とし
一部補修された管路では、補修材の裏や周囲に異常が進行していることがあります。
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ライニング材の内側での空洞化
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接合部の段差・浮き・再劣化
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補修材端部からの漏水
TV映像では「キレイに直っているように見える」ため、補修済み=健全という先入観で見逃すケースも
✅ 対策
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補修範囲の前後5m程度を重点確認
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必要に応じて打音調査や非破壊評価も検討
まとめ:「映っていない」=「異常がない」ではない
TV調査は非常に有効な調査手法ですが、
「映っている範囲だけが判断対象」になりやすいという大きな弱点もあります。
つまり、TV調査での“見える範囲”と“見るべきポイント”を明確に意識しないと、正しい劣化評価はできないのです。
経験者としては、こうした落とし穴を事前に理解し、
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撮影前の準備
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撮影中の確認体制
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映像判読時のダブルチェック
を組み合わせることで、より正確で信頼性の高い診断ができると感じています。