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反発硬度試験(シュミットハンマー)でコンクリート強度は見抜ける?
豆知識
2025.05.01
表層劣化の定量評価と、活用できるケース・できないケースの違い
コンクリート構造物の調査において、「反発硬度試験(シュミットハンマー)」は、手軽かつ非破壊で実施できる評価方法として多く使われています。
下水道施設でも、マンホール・人孔・管渠構造などの健全性評価に導入される場面が増えています。
しかし――
「値が高かったのに、実際は劣化していた」
「補修後に使ったら異常に低かった」
…など、使い方次第で誤解を招くケースも多いのが現実。
この記事では、反発硬度試験の原理・実施手順・強度評価との関係性・向いている場面/向かない場面を整理し、
「現場でどう活用すべきか?」を具体的に紹介します。
1. 反発硬度試験とは?
📌 原理と仕組み
- 金属のハンマーをコンクリート表面にバネの力で打撃
- 反発の強さ(リバウンド)をスケールで数値化
- **反発硬度(R値)**として読み取り、コンクリート強度(N/mm²)に換算する
→ 一般に、反発が強い=強度が高い/劣化が少ないとされます。
2. 試験方法と必要機材
🧪 使用機材
- シュミットハンマー(N型が一般的)
- 表面処理用ワイヤーブラシ
- 記録用スケール・チェックシート
- コア採取装置(相関確認時)
📝 実施手順
試験面の清掃
凹凸・汚れをワイヤーブラシ等で除去
水平に密着させて押し当てる
測定は基本的に垂直方向(下→上)で行う
打撃し、反発値(R値)を読み取る
最低10点以上を平均化
強度換算(推定圧縮強度)
メーカーの換算表で確認(コンクリート年齢・部材種別で調整)
3. この試験で“分かること”
✅ 表層の健全度チェックに有効
評価内容 | 説明 |
---|---|
表層硬度 | 中性化・中空化による劣化の影響を可視化 |
経年劣化の進行判断 | 築30年以上での硬度低下などが目安に |
補修後の材質比較 | 既設部との硬度差を把握できる |
→ 簡易なスクリーニングツールとして“現場判断の第一歩”に最適
4. “見抜けないこと”や注意点
⚠ この試験の限界
限界 | 内容 |
---|---|
表層しか測れない | 内部の強度や中性化は評価不可(2〜3mm程度の影響層) |
表面の状態に大きく左右される | 汚れ・粗面・補修材などにより値がばらつく |
湿潤状態で数値が低く出る | 下水道施設では常に湿気の影響に注意が必要 |
材齢や施工条件により相関が崩れる | 養生条件・混和剤の違いで誤判定リスクも |
→ 「数値が高い=健全」とは限らない。
あくまで「目安として」「比較用に」使うことが重要。
5. 活用できるケース/できないケース
✅ 活用すべきシーン
- 点検業務で多数施設の劣化度をざっくり把握したいとき
- 更生や補修設計における劣化ランク分けの参考として
- 異常値(局部的な低硬度)を見つけて再調査につなげたいとき
❌ 避けるべきシーン
- 精密な設計に用いる圧縮強度データが必要なとき
- 水濡れ・剥離・塗布材などの表面影響が強い場所
- 小面積・特殊形状(R面など)の部位
6. 判定の目安(例)
反発硬度(R) | 推定圧縮強度(N/mm²) | 評価の目安 |
---|---|---|
R≧40 | 30N/mm²超 | 高強度・健全 |
R=30〜40 | 20〜30N/mm² | 通常レベル/経年劣化の兆候あり |
R<30 | 20N/mm²未満 | 劣化進行・要補修検討 |
※実際の換算は材料・年齢・部位で調整が必要
まとめ:反発硬度試験は“第一段階の目安”に活用する
シュミットハンマーによる反発硬度試験は、
**「非破壊」「低コスト」「即時評価」**という点で非常に優れた試験法です。
しかし同時に、“深部の劣化までは見えない”という限界もあるため、
- 打音調査や中性化試験との併用
- 異常時はコア採取・詳細検査で裏付け
といった**“複合評価”の視点を持つことが大切**です。
📌 正しく使えば、現場判断の信頼性が格段に上がります!