お知らせ
非破壊でここまで分かる!下水道構造物の劣化診断法まとめ
下水道施設の維持管理では、「壊さずに劣化を見抜く」ことが強く求められます。
なぜなら、マンホールや管路などの構造物は簡単に破壊して評価することができないからです。
そこで活用されるのが、非破壊試験(Nondestructive Testing:NDT)。
本記事では、実際の現場で使用される代表的な非破壊診断技術5つを紹介し、
「どんな時に、どの方法を使うべきか?」という実務判断に役立つよう整理します。
1. 打音調査(打撃音による空洞・剥離検知)
🔨 概要と目的
ハンマーや打音棒でコンクリート面を叩き、音の違いで劣化を探知
「コンコン」「ボンボン」「ポンポン」などの音から異常を推定
✅ 分かること
表層の剥離・浮き
中空化の兆候
ジャンカ・施工不良の有無
⚠ 限界・注意点
聴き分けに主観が入りやすく、熟練度によって精度が変わる
内部劣化の定量評価はできない
🛠 活用シーン:
初期のスクリーニング、巡回点検、人孔調査の打継ぎ部評価など
2. 反発硬度試験(シュミットハンマー)
🔩 概要と目的
金属ハンマーをスプリングで打ち出し、反発力の強さ=硬さを測定
表層の圧縮強度の推定が可能
✅ 分かること
コンクリート表面の健全性(強度推定)
経年劣化による硬度低下
構造物の「相対比較」評価(部位差・補修前後など)
⚠ 限界・注意点
表面の状態に大きく左右される(湿潤・汚れ・補修材)
あくまで“目安”であり、設計強度の代用不可
🛠 活用シーン:
中性化・打音と併用するスクリーニング調査、報告書の補足評価に最適
3. 超音波パルス法(透過型)
📡 概要と目的
コンクリートに超音波を打ち込んで透過時間を測定し、密度や割れの有無を判断
2点間を伝わる速度で中空・ひび割れの位置や大きさを推定
✅ 分かること
内部のクラック、ボイド、ジャンカ
鉄筋の腐食進行(進行度合いを間接的に評価)
⚠ 限界・注意点
コンクリート厚が大きいと感度が落ちる
一般のマンホール点検では取扱いに習熟が必要
🛠 活用シーン:
大型構造物やコア採取前の事前診断、高度な定量調査を行う場合
4. 電磁波レーダー法(レーダスキャン)
📶 概要と目的
高周波の電磁波をコンクリートに照射し、反射波から構造物の内部構成を可視化
鉄筋や空洞の位置・深さを測定可能
✅ 分かること
鉄筋かぶり厚さの推定
中空・空隙の存在と位置
内部の層構成(スラブ厚、重ね継ぎ)
⚠ 限界・注意点
湿潤環境や金属干渉で精度が落ちやすい
あくまで「画像的」な評価 → 専門ソフト解析が必要
🛠 活用シーン:
補修設計前の鉄筋配置確認、スラブ厚の非破壊調査など
5. 中性化試験(フェノールフタレイン法)【半破壊】
🧪 概要と目的
コンクリートをコアやチッピングで削り取り、フェノールフタレインを噴霧してpHを可視化
中性化の深さを色の変化(ピンク→無色)で測定
✅ 分かること
鉄筋腐食の前兆である中性化の進行
かぶり厚さに対する中性化深度の比較 → 補修判断が可能
⚠ 限界・注意点
コア採取または打継ぎ部の斫りが必要 → 正確には**「半破壊」**
湿潤状態・表面汚染によって発色しづらいことも
🛠 活用シーン:
定期診断、人孔構造の経年評価、補修要否の定量的判断
まとめ:非破壊で“ここまで見える”からこそ、組み合わせて使う
非破壊試験は、それぞれ得意分野と限界があり、
**「単独では判断できない」ことがある一方で、「組み合わせれば強力な診断手段になる」**のが特徴です。
試験法 | 強み | 弱み |
---|---|---|
打音 | 即時性・低コスト | 主観・定量性に乏しい |
反発硬度 | 表層強度を推定可 | 表面の影響大・内部評価不可 |
超音波 | 内部の割れや空洞を確認可 | 厚みや水分に影響されやすい |
電磁波 | 鉄筋位置・空隙探知に有効 | 湿潤・金属干渉に弱い |
中性化 | 腐食前兆を可視化 | 採取が必要/色の見極めに注意 |
📌 目的別に最適な試験を選び、複数の結果で総合判断することが、補修・更生設計の信頼性を高めるカギ!