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老朽化した下水道管路、どう見極める?

現場で使われる劣化判定のポイント

日本の下水道は高度経済成長期以降に急速に整備が進み、現在では全国で50万km以上の管路が稼働しています。その一方で、築50年以上を超える管路が増加し、老朽化による事故や機能低下のリスクも年々高まっています。

とはいえ、限られた予算・人員の中で、すべての管路を一斉に更新・更生するのは現実的ではありません。

そこで重要になるのが、「老朽化の見極め=劣化判定」です。

本記事では、現場で実際に使われている劣化判定の考え方や調査手法、ポイントについて分かりやすく解説します。


1. 下水道管路の劣化とは?

「劣化」とは、経年や外的要因により、管路が本来持っていた性能を徐々に失っていく現象です。

代表的な劣化症状は以下のとおりです。

■ 主な劣化の種類

 

劣化症状 内容 主な原因
クラック(ひび割れ) 管壁に線状の割れが発生 地盤沈下、老朽化、施工不良
欠損 管の一部が欠ける 外力、腐食、摩耗
漏水・浸入水 地下水や土砂の侵入 接合部の緩み、ひび割れ
根入り 樹木の根が管内へ侵入 接合部やひび割れから侵入
管内堆積 土砂や異物の蓄積 傾斜不良、流速不足
断面変形 管の断面が楕円化・つぶれる 土圧、腐食、外力

2. 劣化を見極めるための調査手法

■ TVカメラ調査(自走式)

最も一般的かつ正確な調査手法。

カメラ車両を管内に走らせ、映像と記録をもとに劣化状況を詳細に評価。

ひび割れの長さ、幅、欠損の程度なども数値化できます。

  • 適用管径:φ150〜

  • 特徴:映像記録に基づき客観的評価が可能

  • 注意:流下条件や堆積状況で視認性が変化

■ 管口カメラ調査(簡易調査)

マンホールから一方向または両方向にカメラを差し込み撮影。

スクリーニング調査として有効。短時間・低コスト。

  • 適用管径:φ150〜800程度

  • 特徴:仮診断・緊急調査向け

  • 注意:死角が多く、判定には限界がある

■ 音響調査(打音、超音波など)

構造の内部状態を非破壊で探る方法。

空洞や浮きがある場合、音や波形で異常を検知。

  • 特徴:見えない内部異常を把握できる

  • 注意:精度は技術者の熟練度にも依存


3. 劣化判定の基本視点(現場の評価ポイント)

調査データから劣化の有無・程度を判断する際には、以下の視点が使われます。

✅ ① 劣化の深刻度(等級)

国土交通省や下水道事業団では、「劣化度判定基準(1~5等級)」を採用。

 

等級 内容
1等級 健全。劣化なし
2等級 軽微なひび割れなど。すぐに対策不要
3等級 早期の補修・監視が必要
4等級 重大な劣化。早急な対策が望ましい
5等級 破損・崩壊リスクあり。緊急対応が必要

✅ ② 劣化の分布状況

局所的(部分的なひび割れ)か、連続的(全体が劣化している)か。

→ 対応策として「部分補修」か「全面更生」かを判断する材料に。

✅ ③ 経年と材質によるリスク評価

  • 鉄筋コンクリート管(RC):腐食、中性化

  • 陶管:接合部のゆるみ、破損

  • 塩ビ管(VP):外圧による変形、劣化

  • 更生管(FRPM等):接合不良や材料劣化による剥離


4. 実務で使えるチェック例(現場の視点)

以下のような「現場の小さなサイン」も見逃さずに。

  • マンホール内の壁面に黒ずみや湿気が多い

  • 管内に樹根のような線が確認できる

  • 接合部から白濁水がにじみ出ている

  • 流速が遅く、堆積が見られる

  • 陥没履歴のあるエリア

こうした兆候を元に、重点調査を展開していくことが重要です。


5. 劣化判定を活かすには?

調査によって劣化状況を把握するだけでなく、**「次にどうするか」**の判断が不可欠です。

● 活用例

  • 劣化3等級以上 → 【補修・更生計画の立案】

  • 劣化5等級 → 【応急措置+抜本的対策】

  • 劣化2等級 → 【モニタリング+経過観察】

● 計画への展開

  • 管路単位でのLCC(ライフサイクルコスト)評価

  • GISデータと連動したリスクマッピング

  • 施設ごとの優先順位設定(予算配分の合理化)


まとめ:劣化を「見極める」ことが第一歩

下水道施設の維持管理において、最初にやるべきことは「どこがどの程度劣化しているか」を見極めること。

そのために、正確な調査と、適切な判定指標が欠かせません。

ゼネコンや建設コンサルの立場であっても、発注者と同じ目線で劣化状況を把握し、提案に活かすことができれば、より信頼されるパートナーとしての役割を果たすことができます。