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目視でわかる?わからない?
非破壊調査で見逃さないための技術と工夫
下水道施設の調査や点検において、「目視確認だけで大丈夫か?」という場面は少なくありません。
限られた時間や人員の中で、どこまで調べるべきか、何を使って確認すべきか、判断に迷う場面もあるでしょう。
本記事では、目視確認の限界とその補完手段である非破壊調査の技術、そして見逃しを防ぐための現場の工夫について、現場の実務に基づいてわかりやすく解説します。
1. 目視調査の役割と限界
✅ 目視調査の役割
目視調査は、もっとも手軽で、一次的な判断に向いている方法です。
人孔や管路内を目で確認し、以下のような異常を把握できます。
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ひび割れ・剥離・欠損
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漏水・浸入水の有無
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樹根や異物の混入
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管底の堆積・通水障害
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壁面の変色や腐食の兆候
⚠ 限界がある理由
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照明条件によって視認性が大きく変わる
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死角や構造物の裏側は見えない
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経験による判断のバラつきが出やすい
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「異常なし」と判断しても、内部構造の損傷までは分からない
→ 目視は“気づき”のための手段であり、“診断”とは別物であることを理解しておく必要があります。
2. 非破壊調査とは?その位置づけ
非破壊調査とは、構造物を壊さずに内部や見えない部分の状態を確認する方法です。
下水道施設の調査では、以下のような手法が使われます。
手法 | 内容 | 適用場面 |
---|---|---|
打音調査 | 打撃音の変化から空洞や浮き部を検出 | マンホール壁面・管路内面 |
超音波探査 | 音波の反射から内部状態を推定 | コンクリートの劣化評価 |
電磁波レーダー | 地中の異物や空洞を検知 | 路面下・人孔外壁部 |
熱画像調査 | 表面温度の差で漏水や異常を検知 | 経年劣化の兆候確認 |
内視鏡・TVカメラ | 管内の映像を記録し異常を確認 | 管路の全周観察に有効 |
→ これらを目視の補完・裏付けとして活用することで、見逃しリスクを大幅に低減できます。
3. 目視調査と非破壊調査の“いい関係”
比較項目 | 目視調査 | 非破壊調査 |
---|---|---|
実施の容易さ | ◎(即時) | △(機材や訓練が必要) |
精度・客観性 | △(主観入りやすい) | ◎(数値・映像化可能) |
対象範囲 | ○(開口部など) | ◎(裏側・内部・地中) |
成果の記録性 | △(写真程度) | ◎(データとして残せる) |
→ どちらか一方ではなく、「目的やリスクに応じて組み合わせる」のが理想的な調査設計です。
4. 見逃さないための現場テクニック
✅ 実務で使えるチェックポイント
チェック項目 | 現場の工夫 |
---|---|
光が届きづらい場所 | 高照度LEDライト+ミラーを活用 |
死角や裏側 | 内視鏡式カメラ、蛇腹カメラで確認 |
打継ぎ部のにじみ | 白華の有無、乾燥時の再確認 |
コンクリートの浮き | 打音検査で音の違いを感じ取る |
湿気や異臭 | 換気直後ではなく換気前に一度嗅覚で判断 |
🎯 ダブルチェック体制を整える
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調査は必ず2人以上で実施
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経験者と若手でペアを組む(判断の偏りを防ぐ)
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調査記録は動画+写真で残す(判断の共有・後検討用)
5. 精度とコストのバランスをどう考えるか?
✍ 判断基準例
条件 | 非破壊調査を加えるべきか? |
---|---|
漏水・陥没苦情がある | ✅ 必須。内部異常の可能性大 |
老朽構造物(築40年以上) | ✅ 劣化の進行を予測する目的で有効 |
外観は問題ないが湿気・にじみあり | ✅ 内部からの劣化進行を想定して実施 |
小規模補修の計画がある | ✅ 事前確認として検査することで施工ミス防止 |
全面更生を予定している | △ 必須ではないが、前調査として精度UPに貢献 |
まとめ:見た目だけに頼らない“確かな目”を持とう
目視調査は大事な第一歩ですが、それだけで全てを判断するのは危険です。
非破壊調査という“補助目”を持つことで、見逃しのない、より安全で的確な調査設計が実現できます。
限られた予算の中で、すべてに非破壊検査を使うのは現実的ではありません。
しかし、「ここだけは見逃してはいけない」という場所に対して、ピンポイントで技術を活用する」――それが、今後の下水道維持管理における理想の在り方といえるでしょう。