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築年数だけでは判断できない?

管路の劣化予測と実態ギャップ

下水道の維持管理において、「築年数」は劣化判断のひとつの目安としてよく使われます。

実際、多くの自治体で「築40年以上」の管路を対象に詳細調査や更生工事が検討されています。

しかし、現場ではこんな声も多く聞かれます。

「築50年なのに全く問題なしの管もあれば、築20年でボロボロのケースもある…」

そう、築年数=劣化の進行度ではないのです。

本記事では、下水道管路の劣化を正しく評価するために必要な「複合的な視点」について、

実際の現場や調査実務に即した形で解説します。


1. 築年数で判断すると何が起きるか?

📉 リスク1:健全な管まで“無駄に更新”

築年数だけを基準にすると、

実はまだ十分使える管にまで更生や補修を計画してしまい、コストや施工リスクが無駄に発生することがあります。

→ 「使える管まで壊す」ことは、資産管理上の大きなロス

🚨 リスク2:劣化が進んだ若い管を“見逃す”

逆に、「築浅だから大丈夫」と判断して見落とした結果、

  • 陥没事故

  • 悪臭・漏水苦情

  • 地盤沈下

といったトラブルに発展することも少なくありません。

→ 築年数だけでは本当のリスクは見えないのです。


2. 劣化に影響する“5つの要素”

管路の劣化には、以下のような複合的な環境条件や施工条件が大きく関与しています。

✅ ① 管材の種類・仕様

 

管材 劣化の傾向
陶管(V管) 接合部劣化・根入り・破損に注意
鉄筋コンクリート管(RC) 中性化・腐食・ひび割れが起きやすい
塩ビ管(VP) 変形・圧力に弱く外圧で潰れやすい
更生管(FRPM等) 接合部不良・剥離・層間破断に注意

✅ ② 土被り・施工環境

  • 土圧・水圧が高い場所では変形・割裂リスク増大

  • 湿潤地・地盤改良不十分な場所では沈下・ズレが起きやすい

✅ ③ 地上交通荷重・振動

  • 幹線道路・交差点・バス路線の下などでは疲労破壊や微細なクラックの蓄積が進行

✅ ④ 周辺インフラ・埋設物の影響

  • 他のインフラ(ガス・通信・水道)工事で掘削された影響

  • 上部構造物(建物・杭など)の干渉

✅ ⑤ 流下条件・使用状況

  • 通水量の少ない管は汚泥の堆積 → 内圧上昇・腐食進行

  • 使用頻度が高い管は摩耗・劣化も早い


3. 現場での“ギャップ”の事例紹介

📍 ケース1:築50年超の陶管だが“良好判定”

  • 土被り:浅い(1m未満)

  • 周辺道路:車両通行少ない住宅地

  • 通水:下流で分流されており、使用量少

→ TVカメラ調査でもクラック・ずれなし

→ 補修対象から除外、次回再評価へ

📍 ケース2:築18年の更生管で“要補修”

  • 上部道路:大型車が頻繁に通行

  • 周辺掘削:民間開発で頻繁な地中工事

  • 管材:FRPM更生管(接合部の劣化あり)

→ 接合部から白華、漏水確認 → 注入補修実施


4. どう判断するか?評価設計の考え方

調査や補修計画を立てる際には、「築年数」だけでなく以下のような評価項目を組み合わせてリスク評価を行うのが望ましいです。

🧩 複合スコア評価(例)

 

評価項目 スコア 判定
築年数(30年以上) 3 劣化進行の可能性あり
管材(RC管) 2 中性化・鉄筋腐食リスク
土被り(3m以上) 2 土圧高く変形しやすい
幹線道路下 3 振動・交通荷重大
過去苦情履歴あり 3 対象優先度高

→ 合計スコアにより「優先調査区間」「次年度対象」「経過観察」など段階分け可能


5. 設計・発注者への提案にも有効

建設コンサル・ゼネコンが発注者に対して提案する際にも、

  • 「築年数順」ではなく、リスクスコア順での調査提案

  • 調査対象選定のロジックを示すことで、説得力・納得性が向上

  • 結果的に費用対効果の高い提案につながる


まとめ:見えないリスクは「複合評価」で見えるように

管路の劣化は、築年数だけでは読み切れません。

“何年経ったか”ではなく、“どんな環境で使われてきたか”が劣化を左右するのです。

調査対象や更生・補修計画の立案には、

これからますます「複合的な評価視点」が必要とされます。

建設コンサル・行政担当者がこの視点を持つことで、

より効率的で安全なインフラ管理が実現されていくはずです。