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打音調査で分かること・分からないこと
マンホール壁面の健全性評価法
マンホールの健全性確認において、**「打音調査」**は最も手軽で即時性の高い診断方法として、
多くの現場で日常的に使われています。
しかし、「叩いてみたけど大丈夫そう」「何となく異音っぽいけど判断に迷う」――
そんな経験をしたことのある方も多いはず。
本記事では、**打音調査で“何がわかり”、逆に“何はわからないのか”**を明確にしつつ、
現場でのコツや判断基準、記録方法までを実務者目線で解説していきます。
1. 打音調査とは?
🔨 基本の考え方
打音調査は、マンホール壁面や底版などのコンクリート部を打撃し、音の違いから劣化状態を判断する手法です。
健全部:硬くて高い「コンコン」音
浮き・剥離部:鈍く響く「ボコボコ」音
中空化・内部劣化:空洞のような「ポンポン」音
これらの音の違いにより、内部の“目に見えない異常”を推定します。
2. どこを叩く?対象部位一覧
部位 | 劣化のよくある兆候 |
---|---|
内壁(打継ぎ部・ステップ周辺) | 剥離、浮き、中性化進行 |
管口部(巻立て) | ズレ、段差、隠れたクラック |
底版 | 漏水・外圧での浮き、沈下の兆候 |
蓋受け部 | 躯体と蓋の不整合、段差変形 |
3. 打音調査で“分かること”
✅ 明確な異常を把握できるケース
浮き・剥離部の検知
内部に空隙があると打音が鈍くなる
剥離厚さが大きいほど音が響く
中性化が進行している可能性
コンクリート強度が低下し、音が“響かなく”なる
施工不良・ジャンカ部の発見
部分的に音が変わる → 骨材不足・締固め不足の疑い
補修材のはがれ・二次劣化
一度補修した箇所が再び剥離している場合も音で判別可能
コーナー部の局所劣化
打継ぎ・管口部などに異音 → 内部ひび割れ進行の兆候
4. 打音調査で“分からないこと”
⚠ 判別が難しい・誤判定しやすい事例
限界点 | 説明 |
---|---|
微細なひび割れ(0.1mm以下) | 音には現れない。目視または拡大撮影が必要 |
内部鉄筋の腐食進行 | 音だけでは検出できない(電位測定が必要) |
中性化の数値的な進行度 | 定量評価にはpH試験が必要 |
補修材が厚く音を遮る場合 | 表層材の影響で正しく響かないことも |
→ 「異音=すぐに危険」ではなく、“異常の兆候”として記録・再評価が必要です。
5. 現場での実施ポイントとコツ
🛠 使用する道具
打音棒(鉄棒またはハンマー型)
測定スケール
記録用スマホ or タブレット
チョーク(マーキング用)
👂 判別のコツ
状況 | 聞き分け方 |
---|---|
健全部 | 高く乾いた「コンッ」音。響きが早く止まる |
浮き | こもった「ボンッ」音。響きがやや長め |
中空・剥離 | 空洞感のある「ポンッ」音。振動を感じる場合も |
📷 記録の工夫
音が変化した場所をチョークでマーキング+写真記録
スマホ録音や動画も有効(後で再確認しやすい)
まとめ:打音調査は“きっかけをつかむ目”として活用を
打音調査は、手軽で即効性のある調査手法ですが、「それだけで判断しないこと」が肝心です。
- 音の違いを“異常の可能性”として捉え、
- 必要に応じて他の試験(中性化・圧縮強度・目視拡大)と組み合わせ、
- 最終的な補修判断へつなげていく――
これが、打音調査のあるべき位置づけです。
📌 調査結果を正しく記録・共有することが、チームの判断精度と管理品質の向上につながります。