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鉄筋腐食は見えるのか? コンクリート内部の腐食進行をどう推定するか
下水道の人孔やスラブなどのコンクリート構造物の健全性を考える上で、
もっとも怖いのが「内部で鉄筋が腐食しているのに気づけない」という状況です。
コンクリートの中に隠れている鉄筋は、表面が無事に見えていても、実は腐食が進行していることも珍しくありません。
この記事では、「鉄筋の腐食をどうやって“見える化”するのか?」をテーマに、
**代表的な推定方法(電位測定、ひび割れ、変色など)**を整理して紹介します。
1. 鉄筋腐食が構造物に与える影響
🔧 腐食が進行するとどうなる?
腐食の影響 | 内容 |
---|---|
体積膨張 | 錆が膨らみ、周囲のコンクリートを押し割る(爆裂) |
強度低下 | 鉄筋断面が減少 → 構造耐力が下がる |
剥落・落下 | 鉄筋周辺のコンクリートが剥がれる |
浸水・漏水 | ひび割れから水が侵入し、さらに腐食を促進 |
📉 構造物の寿命を10〜20年縮める要因にも
2. 鉄筋腐食の“兆候”を見極める方法
✅ 肉眼・点検での見つけ方(目視+簡易検査)
見える兆候 | 解説 |
---|---|
錆汁(赤茶色の染み) | コンクリート表面に滲んだ鉄分が酸化した跡 |
クラック(ひび割れ) | 腐食による膨張圧でできる横向き・縦向きの亀裂 |
白華・変色 | 漏水・浸入水による劣化の副次的兆候 |
表面の剥離・浮き | 爆裂直前の兆候。打音調査で「ボンボン」音 |
3. 電位測定法(鉄筋腐食の定量的推定)
📡 腐食電位を数値で測る
鉄筋の**電気的なポテンシャル(電位)**を測定し、腐食のリスクを数値で評価する方法です。
📋 測定手順(概要)
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鉄筋に接続された電極から電流を通電
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参照電極(銅・銅硫酸電極など)で電位を測定
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測定電位(mV)を基準にリスク判定
📊 評価基準(例)
電位(mV) | 腐食の可能性(目安) |
---|---|
≧ −200 | 腐食の可能性低い |
−200 ~ −350 | 腐食の可能性あり |
≦ −350 | 腐食が進行している可能性が高い |
※JIS A 1155、ASTM C876などに準拠
4. ひび割れから読み解く腐食の深度
🔍 クラック幅と腐食の関係
鉄筋の膨張圧により生じるひび割れは、幅によって進行度を推定する目安になります。
ひび割れ幅 | 状態推定 |
---|---|
~0.1mm | 表層乾燥・構造的影響は少 |
0.1〜0.3mm | 中性化・初期腐食の可能性あり |
0.3mm以上 | 腐食による爆裂リスク大。早期対応推奨 |
→ 幅だけでなく“位置・方向・水の有無”もあわせて判断することが大切
5. 表面変状の観察も重要なヒント
✅ 現場でのチェックリスト
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錆汁の有無・範囲・変色部との位置関係
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白華の発生(漏水のサイン)
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表面剥離や“浮いている感触”
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施工年数(築30年以上は要警戒)
📷 写真+位置記録で経過観察にも役立つ!
6. 他の調査との組み合わせで精度UP
方法 | 評価ポイント |
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中性化試験 | 腐食が“起きやすい状態か”を判定 |
反発硬度 | 表層の劣化傾向と組み合わせて判断 |
打音 | 剥離・浮きの有無から爆裂進行度を推定 |
電磁波レーダー | 鉄筋の位置・かぶり厚を推定 |
→ 腐食の「兆候」+「環境」+「位置」の3要素を複合的に判断!
まとめ:鉄筋腐食は“兆候の見極め”がカギ
鉄筋腐食は、見た目には分からなくても、水・酸素・CO₂などが関与すれば徐々に進行していきます。
重要なのは、**「見えるものから、見えない劣化を読み解く目」**を持つこと。
📌 まとめの視点:
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✅ 錆汁・クラック・白華 → 見逃さず記録!
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✅ 電位測定や中性化試験 → 定量的な判断材料に
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✅ 各データを重ねて“判断の裏付け”を取る!
これらの診断を通じて、**「補修のタイミング」や「更生との切り替え判断」**にも活かせるようにしていこう!