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下水道の維持管理はなぜ必要なの?

下水道の歴史

都市の発達とともに「排水」と「衛生」の問題は人々の生活に密接に結びついていました。

約400年前に都市開発された江戸では、上水は掘り抜き井戸だけでなく玉川上水などの水道が江戸町内に整備されていました。

一方、排水についても配慮されていました。

下水の役割は長屋の通路などに設けられた「どぶ」が担っており生活排水や雨水を流していました。

「どぶ」の水は雨水中心でした。

トイレは汲み取りで畑の肥料としており、米のとぎ汁などは掃除や植木に撒くなどしていたためです。

それでも水はけの悪い地域には排水用の「割下水」が整備されるなど都市機能の維持には不可欠のものだったのです。

これらの井戸やどぶの維持管理は町の役割であり定期的な「井戸替え」「どぶさらい」によって行われていました。

現代においても、下水道の機能を維持するためには計画的に巡視・点検・調査・清掃などの日常的維持管理を適切に行い、修繕や改築を行う必要があります。

下水道管路の総延長とは?

近年、下水道の整備が進み管路の累計延長は2001年(H13)には約35万㎞であったものが2018年(H30)には48万㎞に及ぶほど増加していますが、維持管理費用は1200億円程度で推移し増額されていません。

この為、道路や橋など他の社会インフラ施設の維持管理が予算的に厳しくなっているのと同様に、下水道の維持管理予算確保も年々厳しさを増しています。

しかし、2012年(H24)には中央自動車道笹子トンネルで天井版崩落事故が発生し、社会インフラの老朽化・経年劣化に対する維持保全の重要性が大な問題となりました。

下水道においても2017年度末(H29)で敷設から50年を経過した管渠は約1.7万㎞となっており、10年後には約6.3万㎞、20年後には約15万㎞と急速に増加する見込みです。

下水道の老朽化に起因する事故も発生

また、下水道の管路施設に起因する道路陥没事案は年間約3000件発生しています。

さらに、2017年度末現在で下水道終末処理場の電気・機械設備も標準的な耐用年数の15年を経過した施設が1800ヵ所あり、2200ヵ所の施設の82%にのぼっています。

このようなことから、下水道に関して適切な維持管理が一段と重要性を増しました。

下水道事業のストックマネジメントを制定

そこで国土交通省では「下水道事業のストックマネジメント実施に関するガイドライン2015年版」を策定し、長期的な視点で計画的に維持保全を行う事を求めています。

下水道事業におけるストックマネジメントとは『下水道事業の役割を踏まえ、持続可能な下 水道事業の実施を図るため、明確な目標を定め、膨大な施設の状況を客観的に把握、評価し、 長期的な施設の状態を予測しながら、下水道施設を計画的かつ効率的に管理すること』です。

この取り組みにより「安全性の確保と良好な施設状態の維持」「ライフサイクルコストの削減」「合理的な施設管理」「住民等への目に見える説明」が効果として期待されています。

このストックマネジメントを実施していくためには、目標設定のための現状把握が重要です。

下水道施設全体に対し点検・調査等により客観的に把握・評価し、長期的な様々なリスクを想定する必要があります。

5年程度の短期的な部分最適ではなく、中長期的な視野で下水道事業全体の維持管理について、優先順位をつけて実施することが肝要です。

現代の下水道メンテナンス業務

近年は、管路の状況を確認する方法も以前の目視に頼るものからカメラやロボットや劣化予測システムを活用するなど技術革新が進んでいます。

施設特性に応じた適切な点検調査を実施することで長期的なライフサイクルコストと安全性を考慮した維持管理を計画的に行うことができます。

下水道事業を持続的に運営するためには、「施設管理」「経営管理」「執行体制」を含めた戦略的マネジメントの実施が不可欠な時代となっています。