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ゼロメートル地帯と下水道施設

近年問題となっている気候変動により、熱帯域の海面水温上昇による様々な影響が懸念されている。

中でも、台風の大型化や強い降雨の頻度増加は洪水リスクを増加させるため、下水道施設の役割が重要となる。

地球シミュレーターによる温暖化予測結果では、我が国の夏季の豪雨頻度が今後大幅に増加し、短時間、高強度の降雨の発生回数の増加が指摘されている。

短時間に強い雨が降った場合には流域の複合的な水害や土砂災害発生が懸念されるが、下水道施設の排水能力は急に増強できるわけではない。

特に、都市部に広がる広大な「ゼロメートル地帯」は今後大きなリスクを抱えることになる。

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◆ゼロメートル地帯と災害リスク

わが国にはゼロメートル地帯が都市部に多く、東京湾周辺で116平方キロ、伊勢湾周辺で336平方キロ、大阪湾周辺で124平方キロと言われている。

また他の都市でも新潟市周辺で182平方キロ、岡山市では218平方キロがゼロメートル地帯となっている。

しかも、気候変動により海面が60センチ上昇した場合には、東京湾周辺のゼロメートル地帯は現状の116平方キロから2倍以上の244平方キロに拡大し、居住人口も176万人から333万人に増加する。そしてこのような増加は名古屋・大阪・新潟・岡山なども避けることができない。

このような地域では堤防により河川や海からの浸水を防ぐとともに、下水道施設や排水施設により地域内の水を排水することが不可欠となっている。

しかし、ゼロメートル地帯は低地であるがゆえに降雨による内水氾濫や、高潮・高波による浸水、河川氾濫による浸水、地震による破堤による浸水など様々な災害リスクに直面している。

◆浸水対策として強化すべき対策

現在我が国ではゼロメートル地帯を含む低地への人口集中が著しく進んでおり、標高1メートル未満の場所に298万人が生活している。

都市機能維持としての浸水対策の推進が重要となっている今日では、下水道施設も街づくり、河川整備と協働して取り組む必要がある。

中でも、「下水道整備による内水被害の軽減」と「機動的かつ迅速な対応が可能な排水機能の確保」はゼロメートル地帯の浸水対策として重要である。

 

また、豪雨時には「排水施設および排水ポンプ車等による機動的な排水対応」および「下水道管理者から防災部局・住民への水位情報等の発信」が重要であり、復旧時には浸水地域の「迅速な排水機能による湛水排除」と「生活支援およびマンホールトイレ等の運用」が必要となる。

そのためには平常時の計画的な下水道施設の整備・維持管理が重要であり、緊急時に向けた「下水道事業継続計画」による的確な人的・施設等リソースの確保が肝要となる。

 

広大な低地を有している東京都では、下水道施設は様々な対策を講じている。都ではポンプ所等の設備床レベルと周辺の地盤高との差が1.0m未満のポンプ所については、電動機室に雨水が流入しないように、止水板や防水扉などを設置している。

沈砂池・ポンプ室の浸水に対しては、設備床レベルより下の開口部に対して、防水扉などを設置し、耐水化を確保している。

また、計画降雨規模としては「時間雨量50ミリ」としていたが東京都では大規模な浸水の可能性がある地区については「時間雨量75ミリ」に対応する施設設備に改修を進めている。

◆ゼロメートル地帯の課題

都市部に広がるゼロメートル地帯に多数の人々が住んでいる現状であるが、災害対策としては不十分な面も見られる

例えば、地震時の問題点として東京都の下水道ポンプ場は河川堤防の破堤は想定していない。また、スーパー堤防の整備も半ばで停止しており、一部の地域は古い護岸が頼りとなっている。

さらに、「時間雨量75ミリ」対応の整備についても地下部分にはライフライン、鉄道、道路等が網の目のごとく設置されており、下水道管の敷設についてもより地中深く設置する必要があり工事条件は厳しさをましている。