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下水道の事業継続計画

災害や事件・事故、感染症の拡大など様々な事案が発生した際に事業を継続するために策定されているのが「事業継続計画(BCP)」です。

 

現在、下水道団体では事業継続計画の策定が進み、一部はweb等でも公開されています。

しかし、公開されている事業継続計画と国土交通省の「下水道BCP策定マニュアル」を見ると、現在企業が取り組んでいる事業継続計画策定の流れからは周回遅れの感が否めません。

 

 

◆「発生事象」対応中心の下水道事業継続計画

国土交通省は、「下水道 BCP 策定マニュアル 2019 年版(地震・津波、水害編)」を公開し、策定を推奨していますが、タイトルにもある通り「地震・津波、水害」を対象としたものです。

一方、近年の産業界における事業継続計画策定は「オールハザードBCP」が主流となっています。

 

これは、2020年に本格的に産業界に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルスに対し、従来の地震・津波・風水害対応の事業継続計画では対応が難しく、原因の如何に留まらず事業の継続が困難な状況に対応する必要が迫られたためです。

平成25年に第三版が出された内閣府の「事業継続ガイドライン」でも、『災害のみならず、どのような不測の事態に直面しても、強くしなやかに回復できる経済・社会を構築する必要があり、企業・組織の事業継続能力の一層の向上が求められる。』とされており、地震や風水害、感染症等の「原因事象」対応ではなく、「停電し下水道機器が停止、浸水し機器が故障、傷病で要員が不足」などの下水道事業の各業務が停止する事態に対す対応を具体的に定めておく必要があります。

 

原因事象ごとに事業継続計画を策定するのでは、様々なリスクが顕在化するたびに事業継続計画を策定しなくてはなりません。

下水道施設は処理施設の他、管きょやポンプ施設、事務部門などが異なる場所に立地しており、其々の拠点ごとに発生事象ごとに事業継続計画を作成することは、下水道部門のマンパワー的には困難です。

 

下水道事業として施設や設備、人員等の経営資源・リソースに対する脅威が顕在化した際の影響を最小限に抑える事前対策と、機能停止した場合の早期再開復旧の具体的な対応を事業継続計画として策定する必要があります。

 

重要項目が抜け落ちている下水道の事業継続計画

国土交通省の「下水道 BCP 策定マニュアル 2019 年版(地震・津波、水害編)」には第3章として「非常時対応計画」の記述がありますが、第4章の「事前対策計画」は様々な対策の例示も含めており記述が充実しています。

このため、各下水道団体が作成する事業継続計画も事前対策に偏重しており、緊急時の対応が不十分なケースが見られます。

 

また、「(顕在化したリスクの)事業影響の分析」「継続するために重要な業務の選定」「停止した場合の目標復旧時間」等の記載が無い事業継続計画も見られます。

下水道事業の経営資源・リソースが不足してしまった場合に、優先的に対応を集中する業務を定め準備しておくことが事業継続の大きな役割ですので、これらが抜け落ちている場合には形式的な書類のレベルということになります。

 

事業継続計画の位置づけ

組織として「事業継続計画」を考える場合に重要なことが、「計画系の文書(年度単位に取り組むべき事を明記して目標管理する文書)」として扱うか、「規程系文書(組織区分の任務と権限を規定し明記した文書)」とするかを確認しておくことです。

事業継続は緊急事案発生時でも下水道事業を継続・早期再開し、地域の衛生環境と治水を守る役割があります。

この役割を果たすための「方針」「役割」から、「再開・復旧手順」あるいは「普及・教育」や「見直し」などを包含した事業継続計画とその関連マニュアルが重要です。