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下水道設備と感染症

SDGsの6番目のターゲットは「安全な水とトイレを世界中に」となっています。

我が国は下水道の普及率が高く、処理されている割合は9割を越えますが、世界ではまだまだ公衆衛生上の問題を抱えた生活を余儀なくされている地域があります。

現在でも衛生上の問題から感染症が蔓延している地域がありますが、このような歴史は過去にもヨーロッパや我が国でも経験しており、19世紀以降の様々な下水道施設整備の取り組みは、感染症との取り組みであったともいえます。

 

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  1. SDGs達成に向けた取り組み
  2. 下水道と津波災害
  3. 下水道施設の概要

◆近代の歩み

18世紀に農業技術の向上によりヨーロッパの人口は増加し、産業革命により工業生産が増加しました。また、海洋貿易により世界的な交流が盛んになりました。

都市では人口が飛躍的に増加しましたが生活排水や糞尿が街中に投棄され衛生環境が著しく悪化しました。

広く海外との交流は、他の地域の病気ももたらすことになりヨーロッパでは度々赤痢やペスト、コレラなどの感染症が流行し社会問題となりました。

19世紀になると蒸気ポンプやろ過による上水道の整備と、下水道が整備され始めました。特にコレラの流行は医学だけでなく公衆衛生の重要性が着目され、上下水道や道路網などの整備が進められました。

生活排水や糞尿を下水道施設で処理することにより接触感染や飛沫感染を減らすことができるようになりました。

 

◆ウイルス濃縮・蓄積の問題

汚水を下水処理施設で処理するために集めることで、我々の生活に好ましくないモノも集められてしまう結果となりました。例えばノロウイルスは、下水処理施設を通り抜け河川から海洋に出て二枚貝に濃縮・蓄積されることが知られています。

ノロウイルスは小さいため下水処理施設のろ過機構をすり抜けてしまう場合があり、水中でも一カ月以上感染力を維持できることから、カキなどの二枚貝が海水を取り込む際にノロウイルスも一緒に貝の体内に取り込まれ内臓にノロウイルスが蓄積されます。この貝を生や加熱不足で食べると食中毒を起こすことになります。

また、雨水や生活排水、産業排水など様々な汚水を集約して処理するため、人が使用する様々な薬剤も集約され、除去されない一部のものは河川や海に流れ出ることになります。近年は抗生物質などの耐性菌が増殖することも懸念されています。

 

◆管理不十分な設備による感染拡大

2003年に香港で感染が広まったSARS(重症呼吸器症候群)では、排水管を通じてマンションで集団感染が発生しました。

ウイルスを含んだ微細な飛沫が排水口から室内に侵入し、換気扇から換気空間にウイルスが拡散した事例です。

排水溝はトラップなどの封水で逆流を防ぐ構造ですが、未使用で封水が切れるなどしていたため飛沫が逆流したとみられています。

 

◆ウイルスや細菌の検知

新型コロナウイルスの流行により下水道でのウイルス・最近検知が脚光を浴びました。以前から取り組まれている研究分野ですが、新型コロナウイルスの流行を契機として実用化・ビジネス化が進んでいます。

例えば、東京都下水道局では2020年5月13日から下水に含まれるコロナウイルス量を把握する研究を進めています。