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お知らせ

下水道と季節

河原では野草やススキが季節の移り変わりを伝えてくれます。

また、春のアユの遡上はアユ釣りの人には解禁日を心待ちにするなど川は四季折々の姿で私たちを楽しませてくれます。

多摩川では江戸時代は漁業が盛んで徳川将軍へのアユの献上も行われていました。

しかし、時代と共に水質悪化が進みアユも珍しくなってしまいました。

その後、下水道法が改正され積極的に水質保全に努めた結果、近年では多くのアユが遡上し釣り人を楽しませる川になりました。

◆水道は海に繋がっている

下水道は水質保全も目的の一つとして全国で普及が図られ、浄化槽式の下水処理と合わせて各地の水質を大幅に改善しました。

一方、水質環境基準を厳格に順守した結果、生物多様性や水産活動に必要な栄養塩類が不足してしまう現象も生じています。

水に溶け込んだ栄養は海の生物には不可欠のものであり、近年では豊かな海を育むことも下水道の役割の一つに考えられています。

 

平成26年に「流域別下水道整備総合計画調査 指針と解説」が改訂され、地域 の実情に応じた水質環境基準以外の目標設定が可能となりました。このような変化のきっかけとなったのは平成12年に発生した有明海のノリの大不作でした。

平成12年のノリ不作をうけて調査した結果、有明海では無機態栄養塩(窒素及び燐)は、熊本県の白川河口部地先と湾口部、湾奥部の一部の地点を除いて定量下限値以下の極めて低い値となっていました。また、赤潮も発生しノリの育成不良となったのです。

また、他の海域でもいくつかの沿岸域で冬に栄養塩が減少することが問題視されるようになりました。

そこで、下水道施設で除去する栄養塩類の濃度をコントロールし、地域のニーズに合わせて季節ごとに水質を管理する「季節別運転管理」も行われています。

綺麗なだけでなく、豊かな水環境の保全に寄与することも下水道の重要な役割となっています。

◆季節別運転管理のメリット

下水道施設を季節別運転管理することで、消費電力の削減や漁業などの地域産業に対する貢献などがあげられます。

  • 下水処理場の水温が下がり活性汚泥の微生物の活性が低下する冬に、負荷を軽減できる。
  • ノリの養殖に固形の肥料を散布するよりも、放流水に溶けている栄養塩類の吸収が良くノリの育成に好影響となる。一般に、ノリに含まれる全窒素量が多いほど品質が良いとされており、窒素はノリの品質に関係が深い養分となっている。
  • 漁業への貢献などの広報活動により下水道事業に対する漁業関係者との協力関係構築につなげることができる

また、漁業関係者としても肥料散布の手間や経費を削減することができ、品質の良いノリの収穫は地域産業の活性化・地域振興にも役立っています。豊かな海を維持保全する取り組みは始まったばかりです。

海の食物連鎖や関係性は複雑で、下水処理施設の努力だけでは海の環境を守ることはできません。すべての人々が持続可能性のあるな社会に向けて歩んでいくことが重要です。