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下水道と津波災害

下水道施設は処理場が河川に面し、海岸に近い立地が多いため津波被害を受けることが多い。

東日本大震災では120か所が被災し、48か所が稼働停止となった。

津波の被害要因としては波圧・漂流物・浸水があり、東日本大震災の調査では三つの被害割合はほぼ同様となっていた。

◆下水道施設の被害

津波の圧力は処理場施設の壁面を破壊するほどの圧力がある。

また、倒木や巻き込んだ家屋の瓦礫、車両など様々な漂流物は津波の押し寄せる力により処理施設を破壊している。

さらに施設内に津波が浸入した場合には破壊・流出の他に電気系統の被害、泥の堆積など大きな被害をもたらしている。

津波により被害を受けた場合には、地震同等の津波以外の被害を受けた場合に比較すると復旧時間が長期間を要している。

阪神淡路大震災において被災した神戸市の東灘処理場の復旧期間は約100日であった。

一方、東日本大震災により津波被災した処理場の復旧には9カ月以上要した施設が15施設あった。

波圧被害              漂流物被害

処理施設と海岸との距離による被害状況では、当然ながら海岸に近いほど被害を受けており、海岸から500メートルでは8割の施設が機能の一部あるいは全部が停止した。

また、500-1000メートルでも6割の施設が機能の一部あるいは全部が停止している。海岸に近い実ほど波圧による被害が大きく、距離が離れるほど浸水や漂流物による被害割合が増加している。

津波浸水深と被害の関係では、浸水深が小さいほど施設被害の程度は小さく処理施設としての一部機能の停止に留まっていた。

浸水深が1-1.5メートルとなると全機能停止の施設が半数を超えることから、施設の津波対策としては主要設備等について浸水対策が重要となる。

浸水深が0-4メートルまでは機械あるいは電気設備の被害が主体であり、南海トラフ巨大地震の津波被害想定地域の処理施設では事前対策により被害の軽減を図ることが肝要である。

津波による管路の被害では、マンホールのふたの流出が大半を占めているが、浸水によるマンホールポンプの制御盤破壊や水管橋の被害も生じた。

管路そのものは地下埋設が多いため津波の直接的な波圧や漂流物衝突の被害は無いものの、土砂の流入などの被害も発生した。

 

◆対策について

処理施設はその特性上、水辺に近く津波被災のリスクをゼロにすることは難しい。そこで、施設構造や設備の設置位置の工夫により被害を小さく抑えることが重要となる。

 施設は津波が侵入してくる方向と平行な配置とする
 施設の玄関や搬入扉は津波の侵入方向と平行に設計する
 施設は浸水深を考慮して構造補強や防護壁の設置を行う
 漂流物については、施設周辺の状況から防護壁等を検討し漂流物を類推し侵入を防ぐ対策を講じる
 水処理施設の開口部はコンクリート製蓋等により覆う(FRP等の軽量な蓋は流出被害が生じやす)

東日本大震災では流出した管路橋の修理に、製鉄業者が迅速に鋼管を提供するなど官民の協力・連携が不可欠と言える。

一方、被災地域住民は生活排水やトイレなど被災地での厳しい生活を強いられており、上下水道の機能回復は災害時には喫緊の課題となる。

被害想定や事前対策と、災害対応訓練、関連業者との連携など平素の取り組みが重要となる。