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お知らせ

下水道施設と台風の被害

わが国の降雨量は世界平均の約二倍となっており、急峻な国土の特性から降った雨が急激な河川の増水を引き起こし、洪水被害などをもたらすことがあります。

下水道施設は河川近傍に位置していることが多く、洪水が発生した場合には被害を受けやすい立地となっています。

 

令和元年10月に発生した台風19号により、福島・宮城・長野県等では河川の氾濫が相次ぎ死者行方不明108人の被害が発生しました。

下水道施設も各所で被災し、処理場は千曲川流域下水道下流処理区終末処理場、福島県阿武隈川上流流域県北浄化センターなど16カ所が浸水被害を受けました。

 

また、ポンプ場も長野・宮城・福島県等の6県において汚水ポンプ場11カ所、雨水ポンプ場17カ所の計28カ所が浸水被害を受け運転停止となりました。

被災施設では緊急措置・復旧作業により約一週間で処理場は簡易処理(沈殿+消毒処置)以上の処理機能を確保しましたが、電気設備等の本格復旧には時間を要するものもありました。

 

◆千曲川流域下水道下流処理区終末処理場「グリーンピア千曲」の被害

台風19号により千曲川が氾濫し、新幹線車両基地が水没するなどニュースでも大きく取り上げられました。

この車両基地の近くに、千曲川流域下水道下流処理区終末処理場「グリーンピア千曲」がありましたが、10月13日に浸水が始まりほぼ全施設が2-3m水没しました。

水処理施設はもとより、電気室・非常用発電装置・水質検査室なども水没しました。

 

緊急措置作業は人手による汚泥の浚渫、排水ポンプ車での排水、仮設ポンプの設置、高圧洗浄、放流水の固形塩素による消毒などが行われました。

応急・仮復旧では水処理施設からの仮設配管設置、仮設受変電設備・発電機の設置等が行われました。
しかし、破損した機器の本格復旧には時間を要し、揚水ポンプの復旧は1年後となりました。

この台風により同施設では処理場全体の8割にあたる電気盤432面と、9割にあたるケーブル260km・95㌧分の交換を余儀なくされました。

 

また、グリーンピア千曲の上流に位置する東部浄化センター、アクアパル千曲も浸水被害を受けました。

東部浄化センターでは、地下設置のポンプ267台と操作盤74面が水没被災し、電気設備の復旧には1年半を要しています。

また、アクアパル千曲もポンプ棟の揚水ポンプ電気設備等が被災しました。

 

 

◆福島県阿武隈川上流流域県北浄化センターの被害

台風19号による滝川の堤防決壊により令和元年10月13日未明に処理施設全体が水没し処理機能が停止しました。

電気機械設備が多数水没したため、仮設の受変電設備、ポンプ、送風機等を設置し応急復旧を進めました。

 

一部施設では汚泥が堆積するなどして処理水の水質が悪化するなどしましたが、被災直後は需要の高まりから固形塩素や次亜塩素酸ナトリウム等の調達が難しくなり消毒効果の発揮に苦慮しました。

 

 

◆下水道の貯留効果

各地で大きな被害をもたらした令和元年の台風19号襲来時に、横浜市では整備を進めていた雨水を一時的に貯留する下水道施設が浸水被害の軽減効果を発揮しました。

都筑区、港北区、鶴見区などの鶴見川流域では新羽末広幹線が75,100㎥(25mプール約200杯分)、小机千若雨水幹線が201,290㎥(25mプール約537杯分)を貯留し浸水被害を軽減しました。

 

令和元年の台風19号の被害では、各施設の想定水位を超えた浸水による被災が発生しています。

近年は豪雨の頻度も以前より高まっており計画対象降雨および施設計画の再評価を進め、電気設備の上階への移設や防水扉等の設置など被害軽減策と、緊急措置・復旧作業の対応を強化する必要があります。

 

核施設では事業継続計画を策定し被災時に最優先で復旧させる施設・作業プロセスを明確にしておき、そのための資機材・人財等を計画的に確保・育成することが肝要です。