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下水道の維持管理・マネジメントサイクルの確立

戦後から高度成長期に急速な進んだ都市化により社会インフラの整備が求められ、我が国では道路・橋梁・上下水道などの社会資本の整備が進められた。

これらの施設は適切な維持管理を行う必要があり、経年劣化や自然災害・自然浸食、社会的陳腐化などに事前・事後として様々な対応が必要となっている。

このような社会資本の維持管理は近代的な生活を支える基盤であるが、近年は担い手の減少、ノウハウを有するベテラン職員の減少、維持管理予算の抑制などによる課題が影を落としている。

そんな課題に対応するためには将来にわたって適切に点検・調査・修繕・改修を計画的に実施する必要があり、マネジメントサイクルを活用する必要がある。

◆マネジメントサイクルの課題・データベース化の遅れ

施設を適切に維持管理するためにはデータは不可欠である。

しかし、固定的に設備が運転しておりデータ化が容易な「建物」に比較し、「下水道施設」はデータ化が著しく遅れている。

「建物」の場合は、設計・建築から改修・改築等の記録は設計会社・建設会社・施主が共有しており、施設内の設備管理拠点(防災センター等)に常備されている。

 

また、日々の設備の運転記録も常時監視されており、近年はネットワークを通じて経年劣化や異常動作の遠隔監視も行われている。

一方、下水道は戦後から営々と各地で整備が進められたため近年整備されているモノ以前の施設・設備・管路についてのデータ化は著しく遅れている。

平成29年10月の調査では、管路施設の維持管理のデータ化が行われている割合は全国で12%であり、一部データ化を含めても37%に過ぎない。

政令指定都市では90%と取り組みが進んでいるが、都市規模が小さくなるにつれてその割合は減少している。

計画的な維持管理において施設情報・維持管理情報・修繕改修情報を一元管理して関係者間で情報共有することが不可欠であり、効果的・効率的なマネジメントサイクルの構築のためにもデータベース化が急務となっている。

 

◆維持管理情報の整備と判断基準の標準化の必要性

管路施設の日常的な維持管理の情報は、調査・点検時の報告や近隣住民からの苦情や目撃情報など多様な情報があるが、これらの情報の判断基準は標準化されていない場合が多いのが現状である。

下水道施設の維持管理において一概に数値化が難しい場合も多いが、ベテラン技術者などの経験や判断にゆだねられているケースも多く、今後はデータベース化と合わせて標準化を図る必要がある。

 

◆維持管理情報等を起点としたマネジメントサイクルを確立の留意点

効果的・効率的な維持管理のマネジメントサイクルを構築し運用するためには、国土交通省「維持管理情報等を起点としたマネジメントサイクル確立に向けたガイドライン(管路施設編)2020年版」に下記の通り示されている。

 維持管理情報の明確化…巡視、清掃、苦情等日常的に管理する具体的な情報項目の明確化
 情報の活用方法の明確化…日常的維持管理情報より、対応方針を定め効果的な点検・調査を行うなど、維持管理情報等の活用方法の明確化
 データベースシステムの構築…維持管理情報の管理機能、活用機能及びシステム運用形態の構築
 情報管理の役割分担・責任区分…データベースシステムの運用事例を整理→システムを活用し、官民双方でテータ管理している事例等
 伝達手段のルール化…維持管理情報が円滑に引き継がれるように、業務手順・手続きの標準化や伝達ルール(方法、時期)、システムの利用方法等の事例整理

下水道の普及率は平成30年度末において人口普及率79.3%となり、管路の総延長は48万㎞と増加した。

一方、行財政は新型コロナウイルス対策費用が膨大な規模となり各種行政サービスを圧迫し始めている。このような中で、下水道施設は適切な維持管理を行い機能を維持する必要があり、機能低下・停止の場合においては水系に対する汚染や浸水害等を引き起こす可能性もある。

下水道施設は整備の時代から維持管理に重点が移ってきており、今後は迅速にデータベース化を推進し点検・調査・秀是・改修のマネジメントサイクルを確立することが必要となっている。