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下水道と戦争

「雪隠詰め」という言葉があります。将棋において盤上の隅に王将が追いやられどうにも身動きがとれない状況です。昔の屋敷は一番隅に狭い雪隠(トイレ)を設けたことから、隅の雪隠に追い詰められた有様です。

下水道施設は何ら攻撃的な機能は無く都市の衛生を守るものですが、過去には戦争で利用されることもありました。

◆市街戦での下水道

2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵略は、首都キーウやハルキウ、マウリポリなどの都市にロシア軍が迫り市街戦となっている様子が連日ニュースを賑わしました。

都市攻撃においては建物が遮蔽物になり、防御側の軍がその陰に隠れて攻撃側の軍を待ち伏せるなどするため、攻撃側は大きな被害を出すことが多い戦いです。

特に第二次世界大戦では旧ソ連の都市を攻撃したドイツ軍と旧ソ連軍の間で激戦が繰り広げられました。なかでも戦いの帰趨を決めたスターリングラード(現在のボルゴグラード)ではドイツ軍の砲爆撃により瓦礫の山と化した市街地で攻撃するドイツ軍に対し、旧ソ連軍は下水道を地下通路として活用しドイツ軍の背後に兵を送り込み奇襲攻撃を仕掛けました。

 

執拗に抵抗する旧ソ連軍に阻まれたドイツ軍はやがて部隊が疲弊し、旧ソ連軍の反撃により大損害を受け以後は攻守逆転する「天王山」となった戦いでした。

当時のスターリングラードは旧ソ連の工業化政策の中心的都市のひとつで重工業都市として発展しており、近代都市整備の一環として下水道の整備も進んでいたのです。

また、ドイツ軍占領下の都市では抵抗運動の隠れ家・通路としても下水道は活用され、迫害されたユダヤ人などの隠れ家にもなりました。

下水道施設自体は軍事的な目的の施設ではありませんが、戦時においては様々な形で戦いに関わることになったのです。

 

◆サイバー攻撃

2021年8月藤井寺市は下水道関係の業務委託業者がサイバー攻撃を受けたことを発表しました。下水道台帳データと税務のデータの管理業務でしたが、ランサムウェアによる攻撃でデータの一部が暗号化されたためサーバーをシャットダウンしました。

また、9月には東京都も下水道局が施設の設計や調査を委託している業者がランサムウェアによる攻撃を受け、サーバーに保管していた業務関連データを暗号化される被害が発生したことを発表しています。

アメリカでは浄水場の制御施設を狙ったサイバー攻撃により、飲料水に含まれる水酸化ナトリウムの濃度の設定値が100ppmから1万1100ppmに引き上げられました。

直ちに改ざんに気が付いたため健康被害等はありませんでしたが、社会の重要インフラに対するサイバー空間からの攻撃は大きな社会問題となっています。